就活の候補を考えるとき、私は「少しできること」から会社を探していた。 経験がある領域なら、面接でも説明しやすい。 できないことへ近づかずに済む。
その選び方は安全に見えた。 実際には、選考が進むほど辞退したくなった。 自分が働く姿を、うまく想像できなかったからだ。

できることは、入口にはなる#
できることから進路を考えるのは悪くない。 経験、得意な作業、周囲から任される役割は、会社や仕事を知る入口になる。
ただし、そのまま進むと「今の自分が説明しやすいこと」と「これから身につけたいこと」が混ざってしまう。 私はコミュニティ、イベント、メディア、文章、動画などを作ってきた。 誰かの役に立つものを形にすることは好きだった。
一方で、ソフトウェアを自分で作ることには苦手意識があった。 できないから避け、避けていることを「自分には別の向き不向きがある」と説明していた。
苦手意識は、進路の条件でもある#
卒業が近づいたとき、この苦手意識を持ったまま働き始めたくないと思った。 プログラミングができる人になりたいというより、作りたいものがあるのに手を止める自分を変えたかった。
そこで、できることだけでなく、避けてきたことも候補の条件に加えた。 その条件は、仕事の種類を一つに決めるものではなかった。 入社後に技術の基礎を学べるか、技術者と近い距離で働けるか、自分でも手を動かせる余地があるかを確かめるための視点になった。
二つの軸を別の欄に書く#
進路を考えるときは、次の二つを分けて書いておくと混ざりにくい。
- 今できること:経験がある作業、他者に説明できる実績、すぐに価値を出せそうな領域
- これから向き合いたいこと:まだできないが、避け続けると後悔しそうな領域、働きながら試したいこと
前者だけでは、過去の延長線から抜けにくい。 後者だけでは、根拠のない憧れになりやすい。 二つを同じ紙に置くと、今の自分で入れる場所と、そこで何を学びたいかを別々に検討できる。
仕事の名前より、作りたいものに戻る#
当時の私は、エンジニアという肩書きに強く引かれていた。 しかし、後から考えると、職種名だけが欲しかったわけではない。 人や場、情報や仕組みを、自分で少しずつ作れる状態に近づきたかった。
進路が一度で正解になることはない。 それでも、できることだけで自分を小さく説明しないことはできる。 いまの経験を入口にしながら、避けてきた領域へ近づける環境かを確かめる。 その問いがあるだけで、選択は少し自分のものになる。


