個人開発で最初の売上を作りたいと思い、4年ほど断続的に勉強しました。 新しい技術を試し、国内外の成功事例を読み、個人開発者のコミュニティにも参加しました。
それでも、手元に残ったのは売上ではなく赤字でした。
技術が足りないのだと思っていました。 しかし、足りなかったのは作る力より、課題と利用者に出会う場所でした。
開発の中だけで題材を探していた#
当時は、個人開発の成功例を探せば、自分にも作るものが見つかると思っていました。 他の開発者が使う技術や販売方法を調べ、似た手順を試しました。
ただ、その方法では「作れそうなもの」は増えても、「自分が作る理由のあるもの」はなかなか見つかりません。
開発者が集まる場所には、開発者向けのアイデアが多く集まります。 同じ情報を見ている人も多いため、似たプロダクトになりやすいです。
私は一度、個人開発から距離を置きました。 別のことを考えながら生活するなかで、自分が入り込んでいる分野の不便が見えるようになりました。
その気づきが、最初の500円につながりました。
趣味には、まだ名前のない不便がある#
趣味へ時間を使うと、その分野の道具や習慣に詳しくなります。 外から眺めていると小さく見える手間でも、続けている人にとっては何度も出会う不便です。
編み物の回数を数える、授乳中に使いやすい明かりを用意する、投稿の反応を記録する。 市場全体では小さくても、その場にいる人には具体的な困りごとがあります。
大企業にとっては小さすぎる市場でも、個人開発者が最初の売上を作るには十分な場合があります。 必要な人数は、何万人でなくてもよいからです。
技術と離れた趣味ほど、プログラムで解決できる人が少ないこともあります。 趣味を知っていて、作ることもできる人が少なければ、その組み合わせ自体が強みになります。
コミュニティは販売先ではない#
趣味のコミュニティへ入れば、すぐに商品を売れるわけではありません。 興味のない人が突然現れ、「アプリを作ったので買ってください」と言えば警戒されます。
先に必要なのは、その活動を自分も楽しみ、同じ不便を経験することです。 会話のなかで「これがもう少し簡単ならよいのに」という声を聞き、自分の観察と重なるかを確かめます。
作り始める前に、次のような小さな確認もできます。
- 同じことで困っている人がいるか
- いまは何を使って解決しているか
- 試作品があれば使ってみたいか
- お金を払うなら、どの状態まで解決してほしいか
これは市場調査というより、同じ活動をする人との会話です。 信頼関係があるからこそ、表面的ではない困りごとを聞けます。
最初の500円が教えてくれたこと#
最初の売上は、金額だけを見れば小さいです。 ただ、自分以外の誰かが、作ったものへ価値を感じた証拠になります。
私が遠回りしたのは、開発方法を学びすぎたからではありません。 開発の世界だけを見て、課題が生まれる生活へ入っていなかったからです。
個人開発のアイデアが出ないとき、さらに技術記事を読むこともできます。 それでも見つからないなら、パソコンを閉じて別の活動へ時間を使うほうがよいかもしれません。
自分の「好き」が増えると、同時に不便も見えてきます。 その不便を、自分と周りの人のために小さく解決する。
私にとって最初の500円は、開発へ集中した先ではなく、開発から離れた場所にありました。
身近な不便を題材へ変える手順は、個人開発の題材を、身近な課題から選ぶための観察にもまとめています。




