プロダクトの価値を作ろうとすると、まだ誰も解決していない課題を探したくなります。 私も、独自のアイデアが必要だと考えていました。
しかし、note-booster.app が解決した「noteの記事を分析したい」という課題には、すでに別の方法がありました。 新しかったのは課題ではなく、利用するまでの条件です。
価値は、既存の解決方法を少しずらすことでも生まれます。
課題を変えず、利用者をずらす#
noteの記事を分析する方法には、コードを動かすものや、表計算へデータを取り込むものがありました。 技術に慣れた人なら、それでも目的を達成できます。
一方で、プログラミングに苦手意識がある人には、コードが公開されているだけでは使えません。 手順を読み、環境を用意し、エラーが出たら原因を調べる必要があります。
そこでnote boosterでは、分析したいという課題は変えず、技術知識がなくても使えることを条件にしました。 利用者は、複雑な設定をせずにデータを確認できます。
ずらしたのは機能ではありません。 その機能へたどり着ける人の範囲です。
不便ではなく、障壁を探す#
既存の方法があるのに使われていないとき、機能が不足しているとは限りません。 使い始めるまでの障壁が高い場合があります。
- 専門用語が多く、自分に扱えるかわからない
- 初期設定で何を選べばよいかわからない
- ログイン情報を預けることが不安
- 結果を見ても、次に何をすればよいかわからない
機能を追加しても、これらの不安は消えません。 むしろ画面が複雑になり、障壁が高くなることもあります。
note boosterでは、「プログラミングがわからない」という不安を減らすことを価値として置きました。 分析方法を高度にする前に、迷わず使い始められる状態を作ったのです。
ずらせるものは複数ある#
同じ課題でも、ずらせる条件はいくつもあります。
- 利用者:専門家向けの方法を、初めての人でも扱えるようにする
- 操作:複数の手順を、一回の操作へまとめる
- 時間:必要なときに調べる作業を、自動で定期実行する
- 見せ方:データを並べるだけでなく、次の行動を選べる形にする
- 信頼:預ける情報を減らし、不安なく試せるようにする
すべてを同時に変える必要はありません。 利用者が止まっている場所を一つ選び、そこだけを動かします。
再現するなら、疑問を持つ場所を決める#
「少しずらす」という考え方だけでは、偶然の成功を説明しただけにも見えます。 再現するには、どこを疑うかを決めておく必要があります。
私は既存サービスを見るとき、機能の不足より先に次を確認します。
- 誰なら使えて、誰が途中で諦めるのか
- 利用者に要求している知識は何か
- 本来の目的以外に、どんな作業をさせているか
- 不安を感じる情報や権限を求めていないか
ここにずれがあれば、同じ課題へ別の入口を作れます。
まったく新しい課題を発明しなくても、既存の解決方法が届いていない人はいます。 その人が越えられずにいる壁を一つ減らすことも、プロダクトの価値です。
私は新しい機能を考える前に、いまの方法を使えない人がどこで止まるかを見るようになりました。 価値を少しずらすとは、機能を変えることより、届く範囲を変えることだと考えています。




