個人開発で、大企業が作るサービスより多くの機能をそろえようとすると苦しくなります。 開発時間も広告費も違うため、同じ場所で同じ勝負をしても追いつきにくいです。
ただ、利用者はいつも多機能なサービスを求めているわけではありません。 「この機能だけ使いたい」「もっと簡単なら使いたい」という声があります。
私は、その過剰と不足のあいだを 隙間 と呼んでいます。
機能を増やしても、ちょうどよくならない#
大きな市場を狙うサービスは、多様な利用者へ対応するために機能を増やします。 その結果、詳しい人には便利でも、初めて使う人には設定項目が多すぎることがあります。
個人開発者が狙えるのは、同じものを小さく作ることだけではありません。 特定の人が必要とする仕事だけを残し、迷わず使える形に変えることです。
私が note-booster.app を作ったときも、noteの記事を分析する方法自体はすでにありました。 コードや表計算を使う方法は、慣れている人なら扱えます。 高機能な分析サービスもありました。
それでも、noteで文章を書きたい人にとっては、分析のためにプログラムを動かしたり、複雑な指標を読んだりする負担が残っていました。
必要だったのは、分析機能の多さではありません。 投稿を続ける人が、迷わず結果を確認できることでした。
利用者が避けたいことまで調べる#
利用者への理解は、欲しい機能を聞くだけでは足りません。 何をしたくないのかにも、設計の条件があります。
noteの利用者は、文章を書きたいのであって、分析担当者になりたいわけではありません。 数字には興味があっても、複雑なグラフを毎日読みたいとは限りません。
ログイン情報を外部サービスへ渡すことに、不安を感じる人もいます。 そこで当時のnote boosterでは、ログイン情報を取得せず、公開データとブラウザ側の保存を使う構成を選びました。
この判断は、機能一覧だけを比較しても出てきません。 利用者がどこでためらうかを見た結果です。
「できること」を増やすより、「使う前に越えなければならない壁」を減らすほうが価値になる場合があります。
価格は機能の量だけでは決まらない#
価格を決めるとき、開発にかかった時間から考えたくなります。 しかし、利用者が払うのは開発者の苦労に対してではありません。
当時は、基本機能を無料にし、継続して使う機能へ月額料金を設定しました。 考えたのは、機能の数ではなく、利用者が継続して確認できることへいくらなら払えるかです。
安くすれば使われるとも限りません。 無料でも設定が難しければ離脱しますし、有料でも毎日の迷いが減るなら選ばれることがあります。
価格と価値のあいだには、利用する場面があります。 どの瞬間に助かり、その状態がどのくらい続くのかを見ないと、金額だけを比べることになります。
使い捨てられない小ささ#
個人開発では、大きな市場を取らなくても続けられる場合があります。 月に数万円でも、必要な人が繰り返し使ってくれるなら、次の改善へつなげられます。
だから、最初から誰にでも使える完成品を目指す必要はありません。 対象を狭め、その人にとって必要十分な形を作ります。
隙間を狙うとは、誰も見つけていない奇抜なアイデアを探すことではありません。 すでにある解決方法の前で、特定の人が立ち止まっている理由を見つけることです。
私は今も、競合より機能を増やす前に、利用者がどこでためらうかを確認します。 そのためらいを一つ減らせるなら、小さなプロダクトにも作る理由があります。
題材そのものの探し方は、個人開発の題材を、身近な課題から選ぶための観察で整理しています。




